基本的人権のひとつである「移動の自由」が、こんなふうに制限されるときが来ようとは、夢にも思っていませんでした。この4月と6月に予定されていた、ワタシのワクワク欧州出張は、当然ながらキャンセルに。ヒッキーのくせに、予期せぬ制限をされると、「ああ、外国に行きたいなあ」と、遠い目になってしまいます。
●はじめに
布袋ワインズが取り扱っているワイン生産者の中で、ワタシが個人的に超ラブなもののひとつがラジエ・メレディスです。生産量が少ないこともあって、日本での知名度はさほど高くないのですが、そのジンファンデル(=トリビドラグ→このコラムの後編で、この名前の由来を説明します)や、シラーなどは実にクラシックな味わいで、「うま~い」なのです。「なにその造り手?しらんわ」という人は、ぜひ一度お試しいただきたいなあと思います。決して後悔させませんよん。
このほど、「ワイン業界 初老連合会」というNPOを結成しました。発起人のワタシは筆頭理事を務めています。自発的な入会も受け付けていますが、知人・友人で、当方が初老認定をした人は強制加入です。実年齢で線を引いているわけではなく、老眼、白髪、加齢臭、歯槽膿漏、性欲減退、飲酒時の寝落ち、胸焼け・胃もたれ、「あれ」「それ」といった指示代名詞の多用など、初老を初老たらしめている属性がいくつか当てはまるようになった際に、晴れて「認定」となります。主たる活動は、病気・加齢ネタや昔話、および若者の悪口をシェアすること。理由がはっきりとはわかりませんが、女子に加入拒否者が多くて困っています。いずれ、ウェブサイトを作成して、拒否者を含めた加入メンバーのリストを公開しますので、しばらくお待ちください。
ワインの「名前」って何なの?というのは、実はかなり面倒くさい問題だけれども、売上を左右する決定的に重要な要素よん、という前回コラムの続きです。
ワインの「名前」って何なの?というのは、実は面倒くさい問題であります。ワインスクールで教えたりしていると、初学者の生徒さんから「先生、このワインの名前は何ですか?」みたいな質問が出たりするのですが、なかなかこの問いにはシンプルに答えにくい。ここでいう「名前」とは、「そのワインを指すときに普通使う、最小限の単語の並び」とでも言いましょうか。ただそれは、ワインの生産地やその造り手のポートフォリオ、あるいは知名度などによって変わってきまして、わかりやすい法則性がないのです。
高校生のとき、一学年下に「めるろ」くんという男子がいました。当時はいわゆる「珍しい名前の子」という扱いでしたが、今ならかなりアリだよなあと思います。「めるろ」、柔らかくいい響きです。ただし、彼の場合、その名の由来はブドウ品種のメルロ Merlotではなく、フランスの実存主義哲学者モーリス・メルロ=ポンティ Maurice Merleau-Pontyなのですが。
みなさま、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします(ぺこり)。
このコラムを、シャンパングラスを片手にお飲みになられている方も多いでしょうね。さて、百貨店で買った、1万円ほどのそのシャンパンが、政治的な理由である日を境に、突如2万円になったらどうします?
若いときの自分の話をするのはまあまあ恥ずかしいのですが、ワタシは30過ぎの頃、ワイン造りがしたくてしたくてたまりませんでした。いろんな本で、ワイン造りのお勉強をガリガリしていたのですが、「自動車の取扱説明書いくら読んでも、運転してみないことには、『クルマに乗る』ってどういうことかわからんよねー」と思ったのです。自分の手で、どうしてもハンドルを握ってみたいと。そうしないと、この先ワイン業界で何をするにせよ、前に進めないなと。それで、合計すると1年半ぐらいでしょうか、3つのワイナリーで栽培・醸造研修生をやりました。日本でふたつ、カリフォルニアでひとつ。楽しかった。ひ弱なワタシには肉体労働は大変キツかったですが、毎日がキラキラと輝く夢のような時間でした。たかが研修生の身分ですが、本をいくら読んでもわからないreal thingを毎日体験することができたのです。
先日、誰もがご存じのとある超有名インポーターの社長さんとお話をしていた際、その会社の入社試験の一次審査が、「ワインと私」というタイトルの小論文だと伺いました。字数無制限。これは大変に面白い。
数ヶ月前になりますが、ジャンシス・ロビンソンほかによる大著『Wine Grapes』(原書刊行2012年)の翻訳本がとうとう出ました。どういう本かといいますと、世界中のワイン生産国(42カ国)において、商業ベースで用いられているブドウ1,368種を対象に、その起源、別名、栽培特性、主な生産地域、ワインの特徴などなどを詳細に記した事典です。邦訳名は『ワイン用葡萄品種大事典』(共立出版、税別42,000円)。大事典の名にふさわしく、総頁数は堂々の1,500。一日一品種ずつ、あるいは一頁ずつ読んでいっても、読み終わるまでには4年ぐらいかかるという大作でして、4年経つころには最初に読んだ頁など忘れているに決まっているので、半永久的に読み続けられるというお得な本であります。