『Wine Business Monthly』というアメリカのワイン製造業界誌がありまして、この雑誌では毎年2月号で、全米の各州にいくつワイナリーがあるかの統計を発表しています。今年の2月号で発表された最新の数字は、50州の合計で9091軒。ブドウ畑やワイナリーをもたない、ブランドだけの「ヴァーチャル・ワイナリー」も含めた数字です(実体のあるワイナリーが7367軒、ヴァーチャル・ワイナリーが1724軒)。昨年が8702軒だったそうなので、4.5%のアップ。数の増加はまだこの先も続きそうです。
「アメリカ産ワインの9割はカリフォルニア」と、ワインのお勉強なんぞをしているとよく聞くのですが、これはあくまで量の話。ワイナリーの数で言うと、カリフォルニアは4202軒と、全体の半分以下です。同州には、ものすごい量を造っている巨大ワイナリー・グループがいくつかあるので、ワイナリーの数が半分でも、量では9割に届いてしまうのですね。
それはさておき、9091のうちの4889軒は、カリフォルニア以外の49州に分散しているのです。100軒以上のワイナリーがある州を、多い順にあげていきますと、ワシントン(747)、オレゴン(713)、ニューヨーク(385)、テキサス(287)、ヴァージニア(269)、ペンシルヴァニア(229)、オハイオ(194)、ミシガン(156)、ノース・カロライナ(142)、ミズーリ(139)、コロラド(115)、イリノイ(110)、ウィスコンシン(106)、アイオワ(100)と、カリフォルニア以外に14州もあります。なお、びりっケツはアラスカ、ハワイ、ミシシッピの3州で、いずれも4軒だそうです。
今のところ日本にまともに輸入されているのは、上位4州(カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、ニューヨーク)までですが、この先はほかの州のワインも、少しずつ日本に入り始めるのではないかと思われます。アメリカの東のほうにいけばいくほど、西海岸諸州と比べて日本に運ぶ物流コストが高くなってしまうため、価格競争力をもつのは簡単ではないでしょうけれど。
毎年8月になりますと、『The Daily Meal』というアメリカの食サイトが、「101 Best Wineries in America」というランキングを発表します。このランキングの2017年版において、アメリカ最高と評価された101軒のうち、16軒が上位4州以外の州にあるワイナリーでした。ヴァージニア(4軒)、テキサス(3)、メリーランド(2)、コネチカット、コロラド、アイダホ、アリゾナ、ニュー・メキシコ、ペンシルヴァニア、ミシガンの各州が1軒ずつ(なお、ニュー・メキシコの1軒は、布袋ワインズが輸入しているスパークリング専門のワイナリー、グリュエです)。
Gruet: http://www.hoteiwines.jp/winery/winery_detail.cfm?dmnID=9
ワインの価格検索サイトwine-searcherも、「なさそうな州の偉大なワイン Great Wines from Unlikely States」という記事を今年2月に発表し、評論家の平均得点が89点以上のワインを造っている州を紹介しました。ペンシルヴァニア、オハイオ、ミシガン、イリノイ、アリゾナ、フロリダ、ジョージア、テネシー、ニュー・メキシコ、アイダホ、コネチカット、そしてなんとハワイにも。ハワイのワイナリーは、マウイ・ワインズというところで、同州で唯一のAVAであるウルパラクア Ulupalakuaのブドウを使っています。1974年創立と、けっこう古くからある蔵でして、シャンパーニュと同じ伝統的醸造法での泡を生産しているのだそう。いやあ、アメリカは広いです。
そういう意味では、世界はもっと広いですけどね。去年出た『Unusual Wines』という、いろんな意味で「妙」なワインを集めて紹介した本には、台湾産のアイスワインとか、ゴビ砂漠のワインとか、そんなのが載っています。自分の土地でワインを造ってみたいという、生産者の熱い想いは万国共通なのでしょう。
<参考サイト>
https://www.winebusiness.com/wbm/
https://www.wine-searcher.com/…/great-wines-from-unlikely-s…
https://www.thedailymeal.com/…/101-best-wineries-america-20…
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立花峰夫:
ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」スクールマネージャー。
ワインライターとして専門誌に寄稿も行う。訳書・監修書多数。
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