ニュー・カリフォルニアワインの潮流

カリフォルニアワインはその温暖で安定した気候を活かした果実味溢れるリッチなスタイルが長年人気を博してきました。しかし近年主にアメリカ東西海岸の都市部を中心に食文化の変化が起きており、より素材重視で健康志向な料理が若い世代の人々を中心に人気を集めています。またワインの造り手も世代交代が進み、よりエレガントなスタイルにシフトするワイナリーが増えてきました。そんな新たな潮流を後押ししたのがアメリカで大きな人気を集める新世代のワインジャーナリスト、ジョン・ボネでした。彼の著書“The New California Wine”はアメリカ国内のみならず世界中で大きな話題を呼び、食生活やワイン造りの現場に大きな影響を与えています。

そのコンセプトは、

  1. 濃厚な風味のワインではなく、低アルコールでエレガント、長期熟成可能なワイン
  2. 1960~1970年代にカリフォルニアで造られていたクラシック・スタイルへの回帰
  3. 国際品種のみならず、多様なブドウ品種の可能性へのチャレンジ
  4. 旧世界の技術を尊重しつつもヨーロッパの模造品ではない個性的なスタイル
  5. テロワールの重要性に敬意を払い、カリフォルニアらしい太陽の恵みを感じさせるワイン
  6. 少量生産だが一般の愛好家にも手の出る価格帯

といったもので、つまり“ニュー・カリフォルニア”とは「昔に戻ろう」というメッセージであるとも言えます。近年はワイン評論家だけでなく、人気レストランのソムリエ達の影響力が年々増しており、ワイン造りに影響を与えるようになってきました。もちろんそれはカリフォルニアワインのスタイル全体が変わってしまうということではなく、重厚なスタイルのカベルネやシャルドネ、果実味溢れるピノ・ノワールは今後も人気のワインとして人々に愛され、そこにエレガント志向の新たな流れが加わることでより多様性を楽しめる時代になってゆくことを意味しています。今後はこれまで以上に寿司、刺し身、天婦羅を始めとする繊細な日本の伝統料理にも幅広くマッチするワインが次々に登場することでしょう。今後もこの新たな潮流から目が離せません。